Q 就業規則に正社員への転換制度を規定したいのですが・・・?

【質問】

 

当社では、パートタイマーやアルバイト等の有期雇用社員を何名か雇用しています。

 

先日、同業者から有期雇用社員を正社員へ転換させるとキャリアアップ助成金 正社員化コースという助成金を利用できると聞きました。

 

丁度、有能な社員を正社員へ転換させたいと考えていたところですので、是非、その助成金を利用したいと思いますが、就業規則へどのように規定すれば良いのでしょうか?

 

【回答】

 

転換制度には、①対象労働者の要件 ②試験等の手続き ③転換の時期を規定する必要があります。

 

【解説

 

キャリアアップ助成金は、非正規労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を行った企業に対して助成金を支給する制度です。

 

特に正社員化コースは、現在の深刻な労働力不足問題などもあり、企業にとって魅力的な制度ですので、是非、積極的にご利用いただきたいものです。

 

キャリアアップ助成金につきましてはこちらをご参照下さい。

 

>>キャリアアップ助成金パンプレット(厚生労働省)

 

 

ところで、この助成金を利用するには、転換制度を整備する必要があります。

 

転換制度の整備とは、就業規則に転換制度を規定することを言います。

 

就業規則に転換制度を規定する際には、具体的には、以下の項目を記載する必要があります。

 

①対象労働者の要件 

②試験等の手続き 

③転換の時期

 

少し分かり難いかと思いますので、先に規定例をご紹介します。

 

(正社員への転換制度)

第〇〇条 

①パートタイマー等の雇用期間を定めて雇用されている社員は、雇入れ日から6ヶ月経過した以降、雇用期間の定めのない正社員への転換を申し入れることができる。

②転換時期は随時とする。

③転換させる場合の要件および基準は下記の通りとする。

1 正社員同様の勤務期間・日数が可能な者

2 所属長の推薦があり、入社後の勤務態度、業務能力を考慮し、事業主との面接試験に合格した者

 

この規定を基に先程の項目を解説していきたいと思います。

 

なお、キャリアアップ助成金 正社員化コースには、有期雇用労働者から正社員への転換だけでなく、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換、また、正社員も通常の正社員以外にも短時間正社員、地域限定正社員等への転換といくつかのコースに分かれていますが、ここで有期雇用労働者から通常の正社員への転換を例にして解説していきます。

 

①の対象労働者の要件ですが、助成金の条件として正社員への転換前に、有期雇用労働者として6ヶ月以上雇用している必要ありますので、ここでは、転換申請できる時期を雇入れ日から6ヶ月経過した以降とすることで、対象労働者を6ヶ月以上雇用している有期雇用労働者と限定しています。

 

また、所属長の推薦も要件に入れてあります。所属長の推薦は、先程ご紹介した、キャリアアップ助成金のパンフレットの規定例にもあるので、記載した方が良いでしょう。

 

 

②の試験等の手続ですが、ここでは事業主との面接試験としています。

 

試験方法については、特別決まりはないので、どのような試験方法でも良いのですが、あまりに簡単な方法では、適正とはみなされない可能性も考えられるので、最低でも面接試験は行うべきかと思います。

 

もちろん、筆記試験や実技試験を行う規定でも問題ありません。

 

 

③転換の時期ですが、転換の時期についても、特別制限は無いので、ここでは随時としてありますが、毎年4月1日とか毎月1日といった規定でも問題ありません。

 

ただし、転換時期を毎年4月1日というように限定すると、それ以外の日で転換した場合には、助成金の対象とならなくなってしまうので、原則として毎年4月1日という規定の方が、より柔軟性を持たせることが出来るかと言えます。

 

 

なお、今回ご紹介した規定例は、あくまで一例ですので、それぞれの会社の実情によって文言を変える必要がある場合もあります。

 

また、先程触れましたように、この助成金には、通常の正社員への転換以外もいくつかありますので、転換前転換後の労働者の区分によってそれぞれ規定を作成する必要がありますので、実際に就業規則に規定を整備する場合には、行政官庁等での確認をお願いいたします。

 

 

▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら

>> オフィスまつもと 就業規則変更・作成サービス

 

 

【ここがポイント】

 

s_6572e20514ad603dc16b84e6139f6317_s.jpg

 

転換制度を規定する場合、注意しなければならないのは、転換制度を利用できる労働者に適用される就業規則に転換制度を規定することです。

 

 

正社員以外にパートタイマー、アルバイト等を雇用していても、就業規則が1つしかなく、全ての労働者に適用される就業規則ならその就業規則に転換制度を規定すれば良いのですが、正社員就業規則の他にパートタイマー就業規則、契約社員就業規則というように労働者の区分によって就業規則が作成されている場合には、例えば、パートタイマーや契約社員が利用できる転換制度を規定するならば、パートタイマー就業規則、契約社員就業規則に転換制度を規定する必要があります。

 

もし、これを正社員用の就業規則に規定してしまうと、正社員用の就業規則は、あくまで正社員を対象としているものですので、パートタイマーや契約社員には適用されない、つまり、転換制度を利用できない、という理屈となってしまいますので、ご注意下さい。

 

 

なお、助成金は、様々な支給要件が定められており、また、繰り返しになりますが、各会社の状況によって、今回ご紹介した規定例を変更しなければならない場合もありますので、実際に助成金を利用する際には、必ず行政官庁等でのご確認をお願いします。

 

なお、キャリアアップ助成金 正社員化コースにつきましては、さらにこちらの記事でわかりやすく解説してありますので、今後、キャリアアップ助成金 正社員化コースの活用をお考えでしたら、是非、お読み下さい。

↓↓↓

>>キャリアアップ助成金活用のための就業規則の記載例等について

 

 

 

▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら

>> オフィスまつもと 就業規則変更・作成サービス

 

 

【関連記事】 >>助成金利用には就業規則の整備は不可欠

 

       >>会社を守る就業規則 7つのポイントとは・・・?