Q 年俸制の残業代の計算方法を教えて下さい?

【質問】

 

当社では、給与を年俸制により支給しています。

 

具体的には、昨年の業務実績を基に年俸額を決めています。

 

業務の結果として給与を支給しているため、所定労働時間以外での業務も含んで業務実績と考えているため、特別、残業代は支給していません。

 

しかし、先日、ある社員から年俸制であっても、残業代を支給しないのは、労働基準法違反であると、言われました。

 

当社は仕事の結果として年俸額を決めているため、当然、その中には残業も含まれているものと考えています。

 

本当に、年俸制でも残業代を支払わなければならないのでしょうか?

 

もし、残業代を支払う場合には、どのような計算となるのでしょうか?

 

 

【回答】

 

年俸制であっても、法定労働時間を超えて労働させた場合には、労働基準法で規定されている割増賃金を支払う必要があります。

 

 

【解説】

 

労働基準法では、法定労働時間を超えて労働させた場合には、労働者に一定額以上の割増賃金を支払うことを規定しています。

 

ところで、労働基準法には、「給与の支払い方によって割増賃金の支払いが不要になる。」という規定はありません。

 

つまり、どのような形で給料を支給していても、労働者に法定労働時間を超えて労働させた場合には、割増賃金の支払いが必要になります。

 

ですから、たとえ、給料の額が年俸制で決められていたとしても、割増賃金に関しては、時給制や月給制と何ら変わることはありません。

 

ちなみに、残業代だけでなく休日労働や深夜労働に関しても、年俸制であっても、法律の適用は時給制や月給制と全く変わることがありません。

 

これは、多くの経営者の方が誤解している点でもありますので、労務管理において注意が必要な点と言えます。

 

 

ところで、プロ野球選手やサッカー選手なども年俸制が、採用されています。

 

特にプロ野球選手は、シーズンが終了し契約更改の時期になると、「推定年俸○○万円」といったニュースが、新聞やテレビで報道されるので、年俸制という言葉は、よく耳にされるかと思います。

 

 

しかし、ここで1つ疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか?

 

プロ野球の場合、延長戦になった場合、試合時間が4時間以上になり、雨天等もあれば、日付が変わっても試合が終わらない場合があります。

 

しかし、どんなに試合時間が長くなっても、選手に残業代が支払われた、とは聞いたことがありませんし、実際、支給されていません。

 

実は、「年俸制の場合、残業代が必要無い」と誤った認識を持たれる経営者の方が多いのは、ここに大きな理由の1つがあるのではないこと思います。

 

 

そもそもプロ野球なのでプロスポーツ選手は、労働者ではなく個人事業主であることが一般的です。

 

労働者でなければ、当然、労働基準法の適用は受けないこととなります。

 

 

しかし、経営者の指示命令で働き、労働の対価として賃金を受け取る労働者である限り、年俸制で給料が支給されていたとしても、労働基準法の適用を受けることとなります。

 

もし、誤った取扱いをしてしまうと、多額の残業代の未払いが発生してしまう恐れがありますので、注意が必要です。

 

では、年俸制の残業代は、どのように計算すれば良いでしょうか?

 

 

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【ここがポイント】

 

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年俸制の残業代の計算方法は、年俸額を12ヶ月で割って月額を算出します。

 

後は、通常の月給制の割増賃金の計算と考え方は同じとなります。

 

 

ただし、年俸制の残業代の計算で1つ注意しなければならない点があります。

 

それは、賞与です。

 

年俸制の場合、多くの場合には賞与額を含んで年俸額が決められます。

 

 

ところで、通常、残業代を計算する場合には、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は、残業代の単価には入れません。

 

賞与は、通常、年に数回しか支給されないため、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当します。

 

 

しかし、残業代の単価に入れる必要がない賞与は、あくまで支給額が予め確定されていない必要があります。

 

年俸制の場合、予め賞与に相当する額が確定しているため、残業代の単価に入れなくよい賞与には該当しないため、賞与部分を含んだ額で残業代の単価を計算するする必要があります。

 

 

例えば、年俸額が給与部分600万円で賞与部分が100万円の合計700万円として決められていれば、700万円を基に残業代を計算する必要があります。

 

給与部分の600万円だけで残業代を計算すれば、未払いの残業代が生じてしまうこととなります。

 

 

つまり、最初は年俸額を600万円として、賞与を結果として100万円支給すれば、同じ年額700万円の支給であっても、残業代の支払いは少なくなります。

少し理不尽に思えてしまいますが、年俸額に賞与部分を考慮して決めれば、このような取り扱いをするしかないこととなります。

 

 

確かに、賞与額を確定しなければ、残業代は少なくなりますが、その一方で賞与額が確定していれば、労働者のモチベーションは上がります。

 

つまり、どちらを選択するかは、経営者の経営判断によることとなります。

 

 

なお、年俸額に一定の残業代を含んでいる(固定残業)という考えも可能です。

 

ただし、固定残業が適法とみなされるには、就業規則等への明記など必要な事項がいくつかありますので、こちらも注意が必要です。

 

固定残業についてはこちらに詳しく書いてありますので、是非、お読み下さい。

 

>>固定残業代は就業規則に必ず明記を!

 

 

【関連記事】 >>Q 就業規則での深夜割増率はいくつが正しいのでしょうか?

 

       >>就業規則を作成しない7つのデメリットとは・・・?

 

 

 

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